スペシャルインタビュー 2


TETSURO SHIOKAWA

ダイオキシン汚染国日本の
現状を認識した自発運動を。


地球環境フォーラム鹿児島 事務局長
塩川 哲郎

●塩川哲郎氏のプロフィール
塩川哲郎(しおかわ てつろう)
1960年8月4日生まれ。経営コンサルタント会社「ハート・インプルーブ」代表取締役。美しい地球を子どもたちに引き継ごうと95年、市民グループ「地球環境フォーラム鹿児島」を結成。県内各地で環境問題をテーマに年間約100回の講演活動をこなす傍ら、本業では企業のISO14000シリーズの取得など環境マネジメントシステム構築を支援する。鹿児島市山田町に妻と二女一男の5人暮し。

「地球環境フォーラム」への取り組みは、どういった事がきっかけだったのでしょうか。
地球環境にくわしい※高木善之氏を鹿児島にお呼びして、話を聞こうというときに一回限りのつもりで、青年会議所の皆さんと始めました。そして、四年ほど前、セブリン鈴木という十三歳の少女の一九九三年のグローバル会議の閉会の挨拶のビデオを見たのがきっかけです。
※高木善之氏 『地球村』の代表。地球環境の深刻な実態を伝え、環境調和、非対立の社会を訴える。著書は「地球村宣言」「オーケストラ指揮法」「転生と地球」など多数。

鹿児島における環境行政についてお聞かせいただけないでしょうか。
 物の購入ですとか、公共工事の発注を、地球環境に配慮した形で、たとえば、リサイクルでできたものとか、ダイオキシンを発生させないなどの理由で、発注している自治体がありますが、残念ながら鹿児島では遅れているようです。
 また、鹿児島市が、53gのダイエット運動というのをやっておりますが、ゴミは増えたそうです。ゴミを減らすことは、ダイオキシンを発生させない為にも、大切なことです。鹿児島市の一年間のゴミ処理の費用は、約五十五億円です。ゴミを減らしていくには、使うのをやめる、減らしていく、繰り返して使う、どうしてもダメになったときリサイクルする、という循環型社会を目指す必要があります。そして、ゴミを減らすのに最も効果的なのは有料化することなんですが、大事なのは、鹿児島の方、一人ひとりが考え、市民が協力することですね。

鹿児島における環境問題の現況と実態についてお聞かせいただけないでしょうか。特に「オゾン層の破壊」と「環境ホルモン」についてお願いします。
 オゾン層を破壊するフロンガスの生産は中止されましたけど、フロンガスがオゾン層に到達するのに十五年から二十年かかります。つまりオゾン層は、これから十五年から二十年は毎年、毎年、悪化します。私たちが二十年ぐらい前に捨てた冷蔵庫やエアコンのフロンガスが、今影響を及ぼしています。南日本新聞では、夏だけですけど紫外線情報が載っています。現在、鹿児島では、晴れの日はUV指数8.0以上あります。つい先日は、10.2という値が載っていました。これは、他の国では、外に出ないようにという数字です。このように日本では鹿児島、宮崎、沖縄の日差しは異常です。大人は、ある程度平気でも、子供たちは大変です。鹿児島では、以前は七十〜八十代で発病していた白内障が、二十代、三十代で発病してしまうという人が出てきています。
 オーストラリアでは、十五年程前から、小学生に「制服、制帽、制サングラス」を使っていますが、鹿児島でも是非サングラス等の対策を取って欲しいですね。また、紫外線による日焼けで、首筋や耳の裏に皮膚ガンが発生しやすいので、帽子の後ろに日除けを付けたり、またプールにも日除けを付けて欲しいですね。山梨県では、八割のプールに日除けが付いているそうです。鹿児島では、灰除けがついているので、少し工夫して、子供たちの日焼け止め対策、子供たちへの配慮をお願いしたいと思います。
 次に、「環境ホルモン」についてお話します。よく新聞記事などで、「ゴミ焼却場からダイオキシン」などという記事を目にすることがあると思います。最近では、プラスチックは焼却すると「ダイオキシン」が発生する、また埋め立てると、「フタル酸エステル」や「ビスフェノールA」といった環境ホルモン物質が染み出すと言うことが判ってきました。
 日本は、現在、世界でもっともダイオキシンに汚染されている国になりました。大気は、ドイツ、オランダ、アメリカなどに比べて、十倍汚染されています。雨が降ってくると、ダイオキシンは、雨と共に降ってきて、土壌に染み込み、最終的には海に行きます。大気が、十倍汚染されているということは、海はそれ以上に汚染されています。しかし、日本も対策を取っているから、大丈夫なんじゃないですかと思われるかもしれませんが、ダイオキシンは、体内に入ると半分になるのに十五年ほどかかります。
 一九八九年に、WHOが調査した結果、母乳中のダイオキシン濃度は、ベトナム人を抜いて日本人は第一位になりました。ダイオキシンの怖さは、1gで一万から一万七千人を殺せる力があります。また、成長ホルモンを阻害したり、撹乱し、癌や奇形化、アトピーの原因になります。
 錦江湾についてお話しましょう。約十万種類ある化学物質の中で七十弱の化学物質が、「環境ホルモン」の疑いがあると言われています。半分が、農薬や殺虫剤です。残りが、プラスチックの原料だったり、塩ビに加える可塑材だったり、ダイオキシン、ベンゼン、合成洗剤などです。一九九五年のイボニシバイ貝のオス化の奇形率の環境庁による調査では、錦江湾の国分、隼人港では100%の奇形率でした。
 また、他の二十二種類の貝も同様でした。錦江湾の中の魚介類はかなりの割合で奇形だということが判りました。

写真/クインズランド州ブリスベーン OAKLEIGH STATE SCHOOL 
(南日本新聞1999年4月17日より)

地球環境の未来はどうなるでしょうか。
 どう考えても悪化しつづけると思います。かなりの犠牲がでるのはしょうがないと思います。間に合わないといういい方はしたくないけど、五年遅くとも十年経ったら、かなりの事が起こっていると思いますよ。やせた子供たちの写真を見たことがあると思いますが、日本の子供たちがあんな風になる可能性はありますよ。地球温暖化の為に、日本全体が思うように、食べ物を作れなくなるでしょうね。だけど、今から取り組む事で、少しは間に合うかも知れません。それから何十年かして、まともになっていくと思います。
 現在の地球を映画『タイタニック』に喩えると、氷山に接触した時、水が入ってきたのを、一番下にいた人が真っ先に気づくわけですよね。その人達は、命からがら逃げるわけですよ。でも、一番上の人達は、船が傾いても、「まだ、まさか」と酒盛りをしている状況、本当に事実がわかったときに、真っ先に逃げる人達もいるんですけど、女、子供達から助けようという視点で、自分はいいから子供達をボートに乗せて助ける人もいるわけですよ。最後に、その子供達は助かる、という映像が地球自体にも起こるんではなかろうかと思いますよ。そして、最後まで諦めないで、残る人達の為に自分たちでできることをやりたいなと思います、役でいうとレオナルド・ディカプリオのように。

塩川さんが、地球環境の為に取り組まれていることを、具体的にお話いただけないでしょうか。
 わが家では、洗濯は炭と塩でします。頭もお酢で洗います。冬には、お風呂に入らない日、石鹸を使わない日、というのがたくさんあります。毎日、洗濯やシャンプーが必要なのか、考えて欲しいと思います。
 僕の家でも三十年前は、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでいました。一緒にご飯を食べ、一台のテレビを見て、フロも追炊きしないように続けて入りました。でも今はどうでしょう。別々に食事や風呂に入り、それぞれの部屋でくつろぐ、エネルギーの無駄遣いですね。
 今、「トトロの家」みたいなところに住んでいるんですが、ご飯を一緒に食べ、お風呂も続けて入り、食事やお風呂の後も一つの部屋で一緒にすごし、家族いつでも顔を合わして、いろんな話をしたり、勉強も見てあげられたり、僕と家内の話を横で聞いてたりして、そういう一家団欒が、大切だと思います。家庭の中では、長続きできることを楽しくやってください。

我々にメッセージをお願いいたします。
 今までお話してきました環境の現状を知っている人は、百人に一人だといわれています。是非、事実を知って危機感を持ち、やれることを考えて、目的意識を持って、楽しくやって欲しいですね。
 最後に、私が環境問題に取り組むきっかけとなった一九九三年のグローバル会議の閉会の挨拶をご紹介していただければ、幸いです。

(2000年8月18日取材)

地球を残しておいて下さい

1993年4月24日子供環境機構
ECHO代表 セブリン鈴木(13才)

 お話させていただくこと、とても光栄です。
 こんなことを言うのを許していただきたいのですが、グローバルフォーラムを聞いていて物足りなく感じました。「価値の転換はどうすればいいか」と一生懸命に議論している大人の人たちを見ていると、難しいことを考えすぎて、簡単なことを忘れてしまっているように思うのです。
 私たち子供は自然と親密な関係を失っていません。オタマジャクシや花や昆虫などを愛しています。そして人間が自然の一部であることも知っています。価値の転換の秘密は、子供の頃を思い出すことです。自然の中で遊んだこと、それがどんなに素敵だったか、それがどんなに大切だったか、大人が何でも解決してくれると信じていたこと、何が正しく何が間違っていたかを知っていたことを思い出してください。本当に大切なことは、純白で偽りの無いことです。
 あなた方の中の子供の心は、一番大切な価値や本質を知っています。それなのにあなた方の興味は株や出世やお金儲けのことばかりです。いくらお金があっても自然がなければ生きていけません。あなた方は「子供のときは自然はいつもそばにあった。」という思い出を持つ最後の世代になってしまうのではないでしょうか。
 私は二十一世紀に二十一才になります。あなた方の残した地球で生きることになるのです。私たちが生きることのできる地球を残すためには、大きな変革を急いで実行する必要があります。本当にそれをしてもらえるでしょうか。もし、あなた方がやらなければ、いったい誰がするのでしょうか。
 ソマリアやバングラデッシュでは子どもたちが飢えで苦しんでいます。
 でも、豊かな国の政府は、分け与えることをしたくないようです。貧困や公害を無くすことのできるお金よりたくさんのお金が、破壊や戦争のために使われていることが不思議でなりません。
 私は子供環境機構(ECHO)で環境保護の活動をしていますが、いつも「経済が優先」という論争に巻き込まれます。でも、きれいな空気、水、土がなければどうやって生きていけるのでしょう。私の友達の両親はタバコを吸います。そして「タバコを吸ったらダメよ。」といいます。でも、きっとその子はタバコを吸うと思います。子供にとって大人はモデルなのです。どうして違う行動を取れるでしょうか。あなたはいつも言っています。「けんかをしてはいけない。」「生き物を傷つけてはいけない。」「欲張ってはいけない。分け合いなさい」と。でもどうして、あなた方はいけないことばかりしているのですか。
 私の両親は環境保護の活動をしています。私はそれを誇りに思っています。将来を失うということはとても恐ろしいことです。お金がなくなったり、株が下がったりすることとは比較になりません。私はたくさんの動物、鳥や昆虫を見ることができましたが、果たして私の子どもはそれらを見ることができるでしょうか。あなた方は子供のとき、こんな恐ろしい心配をしたことがありましたか。
 全てはあなた方の時代から始まっています。
 そして「まだ大丈夫、まだ時間がある。」ように振る舞っています。でもオゾンホールの修復の仕方を知っていますか。死んでしまった川に鮭を呼び戻すことができますか。絶滅した動物たちを生き返らせることができますか。砂漠になってしまった森を元に戻すことができますか。それができないのならせめてこれ以上、地球を壊すのを止めてください。
 ブラジル地球サミットのとき、リオで道に住んでいる子供(ストリートチルドレン)を見てショックを受けました。その一人が私に「もし僕が金持ちだったら、みんなに食べ物や小屋をあげるのに…」と言いました。何でも持っているあなた方がなぜあげないのですか。なぜもっと欲しがるのですか。
 この会議で聞いたことは去年リオ(地球サミット)でも聞きましたが、事態はさらにひどくなったように思います。会議で決めたことが実行されるのはいつですか。心配でたまりません。あなた方は私たちのモデルです。私たちはあなた方のようになろうとしているのです。どうかお手本を見せてください。どうぞ勇気を失わないでください。「正しいと信じることをしなさい。」といつも言うでしょう。どうして、そうしてくれないのですか。もう、時間は残されていないのでしょう。
 世界中の子供たち、未来の生命を代表して尋ねます。「あなた方は何を私たちに残してくれるのですか。」「あなた方は何を待っているのですか。」
ありがとうございました。